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プライベートバンク(PB)を利用できる金額は、日系の証券系で1億円前後、外資系では3億円以上が目安です。公表されている数少ない基準では、UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントおよびUBS銀行東京支店との取引に「金融資産3億円相当以上の預入れ」が必要と明記されています。ただし多くの金融機関は基準を公表しておらず、実際には預入額だけでなく資産の中身や取引の継続性が審査されます。
この記事でわかること
- 公表された最低預入額はUBS SuMi TRUSTの「金融資産3億円相当以上」です
- 日系証券系は1億円前後、外資系は3億円以上が実務上の目安です
- 手数料は金融庁調査で年1.41〜1.74%、3億円なら年423万〜522万円です
- 手数料に見合うかは運用益ではなく「承継・税務の付加価値」で決まります
- 海外PBは手数料体系と商品の幅が異なりますが、登録の確認が前提です
- 基準に届かない場合も、資産を集約せずに使える選択肢があります
監修者
中島宏明
投資コラムニスト、経営者のゴーストライター(書籍、オウンドメディア、メルマガ、プレスリリース、社内報、スピーチ原稿、YouTubeシナリオ、論文…)
2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。2014年に一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。マイナビニュースで、投資・資産運用や新時代の働き方をテーマに連載中。
プライベートバンクはいくらから利用できる?
プライベートバンクの利用に必要な金額は、金融機関の系統によって1億円から10億円以上まで開きがあります。最も大きな理由は、PBが「預かった資産の残高に応じた手数料」で成り立つビジネスであり、一定額を下回ると担当者を専任で付けるコストが回収できないためです。
【用語解説】プライベートバンク(PB)とは
富裕層を対象に、資産運用・資産管理・相続や事業承継の相談までを担当者が一括して受け持つ金融サービスです。銀行・証券会社の一般窓口とは別部門として設けられているのが通常です。
公表されている最低預入額は極めて少ない
最低預入額を公式サイトに明記している金融機関は、日本国内ではほとんどありません。数少ない例が、三井住友信託銀行が案内するUBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントです。同行のウェルス・マネジメント紹介ページには「UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社およびUBS銀行東京支店とのお取引には、金融資産3億円相当以上のお預入れが必要となります」と記載されています(三井住友信託銀行「ウェルス・マネジメントのご紹介」)。
これ以外の多くの金融機関は、基準そのものを公開していません。非公表の理由は、審査が預入額の一点だけで決まるわけではないからです。同じ3億円でも、上場株式の含み益が中心の資産と、現金と債券が中心の資産では、金融機関側の収益見込みが変わります。
系統別に見た最低金額の目安
公表情報と実務上の目安を系統別に整理すると、次のようになります。非公表の金融機関については「公表なし」と明記し、推定値を確定情報のように扱わない形でまとめました。
| 系統 | 最低金額の目安 | 情報の出所 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 外資系ウェルスマネジメント(日本拠点) | 3億円相当以上 | 公式サイトに明記あり | グローバル運用商品へのアクセスが広い |
| 日系証券系PB | 1億円前後 | 公表なし(各社非開示) | 国内の相続・事業承継に強い |
| 日系信託銀行系PB | 数億円規模 | 公表なし(各社非開示) | 不動産・信託機能を組み合わせられる |
| 海外拠点のプライベートバンク | 数億円〜十数億円 | 公表なし(各社非開示) | 非居住者要件・現地渡航が必要な場合がある |
表1:系統別に見たプライベートバンクの最低金額の目安(2026年8月時点)
この表で押さえておきたいのは、「公表なし」の欄に書かれた金額はあくまで市場での目安であり、金融機関が保証した基準ではないという点です。他媒体では「野村證券は1億円」「みずほ銀行は10億円」といった具体名と金額の対応表が掲載されていることがありますが、これらは公式発表に基づくものではありません。実際の可否は個別審査で決まります。
ネット上に流通している「金融機関名×最低預入額」の一覧表は、その大半が推定値です。数字を根拠に金融機関を絞り込む前に、必ず当該金融機関へ直接確認してください。
富裕層の母集団から見た位置づけ
そもそも「3億円以上」という水準がどれほどの層に該当するのかを、公的な推計で確認しておきます。野村総合研究所の2025年2月13日発表の推計によると、2023年時点で純金融資産1億円以上5億円未満の「富裕層」が153.5万世帯、5億円以上の「超富裕層」が11.8万世帯、合計165.3万世帯とされています(野村総合研究所ニュースリリース)。
つまり外資系PBの3億円という基準は、富裕層153.5万世帯のうち上位の一部と、超富裕層11.8万世帯が対象圏に入る水準です。一方、日系証券系が目安とする1億円であれば、165.3万世帯のほぼ全体が理論上は射程に入ります。「PBは限られた人しか使えない」という印象ほど、実際の門は狭くありません。

プライベートバンクの手数料はいくらかかる?
プライベートバンクの手数料は、預かり資産の残高に対して年率で課される形が中心です。金融庁が2023年4月に公表した「資産運用業高度化プログレスレポート2023」では、投資一任型サービス(ファンドラップ・SMA)の手数料開示の好事例として、コース別に年1.41%から1.74%という数値が示されています(金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2023」の公表について)。
手数料は4つの層に分かれている
同レポートの図表14では、この年1.41〜1.74%という数値が単一の手数料ではなく、複数の受け取り手に分かれる構造であることが示されています。内訳は、投資一任報酬(資産運用・顧客対応・ラップ口座の管理)、ファンドの信託報酬(資産運用会社・販売会社・信託銀行の取り分)、そして消費税です。
ここで重要なのは、投資家が目にする「運用報酬」の表示だけでは総コストがわからない構造になっている点です。同レポートは、ファンドラップについて、複数の投資信託を組み合わせた商品なのか、それとも運用の判断まで含むサービスなのかが明らかでないケースがあると指摘し、コスト控除後のパフォーマンスや手数料の構成について情報開示の充実を期待する、と明記しています。
PBの提案書を受け取ったら、表示された報酬率が「投資一任報酬のみ」なのか「信託報酬を含む総経費率」なのかを必ず確認してください。この区別を確認しないまま比較すると、実質コストが倍近く違うことがあります。
資産額別の年間手数料を実額で見る
年率での表示は実感を持ちにくいため、金融庁が示した水準を使って実額に換算します。下限の年1.41%と上限の年1.74%で、それぞれ資産額別の年間手数料を計算しました。
| 預入資産 | 年1.41%の場合 | 年1.74%の場合 | 10年間の累計(年1.41%) |
|---|---|---|---|
| 1億円 | 141万円 | 174万円 | 1,410万円 |
| 3億円 | 423万円 | 522万円 | 4,230万円 |
| 5億円 | 705万円 | 870万円 | 7,050万円 |
| 10億円 | 1,410万円 | 1,740万円 | 1億4,100万円 |
表2:金融庁公表の手数料水準(年1.41〜1.74%)で換算した年間手数料
10年累計の列を見ると、負担の性質が変わって見えるはずです。5億円を預けた場合、10年間で7,050万円が手数料として出ていきます。運用が好調な年も不調な年も、残高に対して定率で発生する固定費です。
なお実際には、預かり資産が大きいほど料率が逓減する体系を採る金融機関が一般的です。10億円の顧客に1億円と同じ料率が適用されるケースは多くありません。ただし逓減後の具体的な料率は個別交渉で決まるため、提示を受けるまで確定しない点には注意が必要です。
手数料の損益分岐点はどこにあるか
ここが本記事の中心です。「いくらから使えるか」よりも、実務上は「いくらから手数料に見合うか」のほうが重要になります。
仮に年1.41%の手数料を運用リターンだけで回収しようとすると、市場平均を年1.41%以上上回り続ける必要があります。これは運用の世界では簡単な条件ではありません。金融庁の同レポートも、コスト控除後のパフォーマンス開示が不十分である現状を課題として挙げています。
したがって、PBの手数料が正当化されるかどうかは、運用成績ではなく「運用以外の付加価値」で判断するのが現実的です。具体的には次の3点です。
- 相続・事業承継の設計を、税理士・弁護士と連携しながら一括で進められる
- 非上場株式や不動産を含めた資産全体を、一つの窓口で把握できる
- 海外資産・外貨建て資産の管理と、国内税務との整合を取れる
これらの価値が年間数百万円に見合うかは、資産の中身によって答えが変わります。金融資産のみで構成された3億円なら、証券会社の一般窓口と低コストの投資信託で代替できる余地が大きいでしょう。一方、非上場株式と不動産と金融資産が混在し、承継の期限が見えている資産であれば、年423万円の対価として妥当と判断する余地が出てきます。
海外のプライベートバンクはどう違う?
海外のプライベートバンクは、運用商品の選択肢と手数料体系の設計が国内とは異なります。国によって金融規制が違うため、国内では組成できない商品や、残高に応じた料率の刻み方が可能になるからです。ただし日本の居住者が利用する場合には、金融商品取引法上の確認事項が別途生じます。
手数料体系と運用商品の違い
国内のPBは、預かり資産に対する残高比例の報酬に加え、売買のたびに発生する手数料を組み合わせる体系が中心です。一方、スイス系を中心とした海外PBでは、残高比例の報酬に一本化し、売買手数料を含めて包括的に扱う体系が採られることがあります。
この違いが効くのは、取引の回転率が高い場合です。残高比例に一本化されていれば、回転売買を勧めても金融機関側の収益が増えないため、提案の動機と顧客の利益が構造的に対立しにくくなります。
運用商品の幅が広がるのは、各国の金融規制が異なるためです。日本国内で一般の投資家に販売するには金融商品取引法上の届出や目論見書の整備が必要ですが、海外で組成された商品にはこの手続きを経ていないものがあります。ただし「日本にない商品」は「日本の投資家保護のルールが及ばない商品」でもあります。
海外PBの手数料率は各社とも公表していません。「海外のほうが安い」と断定できる公開データは存在しないため、実際の負担は個別に提示を受けて比較する必要があります。体系の設計思想が異なる、という点までが公開情報から言えることです。
| 観点 | 国内PB | 海外PB |
|---|---|---|
| 手数料体系 | 残高比例+売買手数料の組み合わせが中心 | 残高比例に一本化する体系もある(料率は各社非公表) |
| 運用商品の幅 | 国内で販売可能な商品に限定される | 国内未承認の債券・ファンドも選択肢に入る |
| 相続・事業承継 | 日本の税制・法制に精通した体制がある | 日本の相続実務への対応は限定的な場合がある |
| 言語・手続き | 日本語で完結する | 英語での契約・現地渡航が必要な場合がある |
| 日本の投資家保護 | 金融商品取引法の保護が及ぶ | 無登録業者の場合は保護が及ばない |
| 納税・報告 | 特定口座で完結する場合が多い | 確定申告・国外財産調書等の対応が必要になる |
表3:国内PBと海外PBの比較(2026年8月時点)
この表で最も重要なのは最下段の2行です。手数料と商品の幅だけを見て比較すると、海外が有利に見えます。しかし実務上の負担と、トラブルが起きたときに保護が及ぶかどうかを含めて判断しないと、判断材料として不十分です。

【必須】日本の居住者が利用する際の確認事項
日本に住んでいる人が海外の金融機関と取引する場合、その業者が日本の登録を受けているかを必ず確認してください。金融庁は次のように明示しています。
金融庁による注意喚起
「海外所在業者であったとしても、日本の居住者のために又は日本の居住者を相手方として金融商品取引を業として行う場合は、金融商品取引業の登録(日本の『金融商品取引法』に基づく登録)が必要です。日本で登録を受けずに金融商品取引業を行うことは、禁止されています」(金融庁「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」)
無登録業者と取引した場合のリスクについても、金融庁は具体的に挙げています。同庁の注意喚起ページでは、出金の拒否や法外な出金手数料の請求、それまで連絡が取れていたのに急に連絡が取れなくなるといったトラブルが多く寄せられているとされ、無登録業者は投資者等の保護のための態勢が整っていない可能性が高いと指摘されています(金融庁「無登録業者との取引は要注意!!」)。
登録の有無は、金融庁が2026年1月30日から運用している「金融事業者一括検索機能」で確認できます。名称や電話番号を入力すれば、免許・許可・登録等を受けている事業者かどうかを調べられます(金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」)。
海外PBの検討は、金融機関の格や手数料の比較から入るのではなく、日本の登録の有無を確認するところから始めてください。この1点で、検討対象から外すべき相手を先に除外できます。
税務・報告の負担を織り込む
海外の金融機関に資産を置く場合、国内で完結する場合とは別の手続きが生じます。この負担は手数料の差を打ち消すことがあるため、比較の段階で織り込んでおく必要があります。その年の12月31日時点で国外財産の合計額が5,000万円を超える居住者(非永住者を除く)には、翌年6月30日までに国外財産調書を所轄税務署長へ提出する義務があります(国税庁 No.7456 国外財産調書の提出義務)。運用益の申告も、特定口座のような源泉徴収では完結しません。
加えて、日本と各国の税務当局は共通報告基準(CRS)に基づいて金融口座情報を自動的に交換しています。国税庁の発表によると、令和6事務年度に外国税務当局から受領したCRS情報は2,745,374件で、前事務年度比111.81%と増加しています(国税庁 CRSコーナー/件数は国税庁「令和6事務年度 租税条約等に基づく情報交換事績の概要」による)。海外に口座を持つこと自体は適法ですが、申告漏れが把握されない仕組みではありません。手数料の差だけで判断せず、申告実務にかかる税理士費用まで含めた総コストで比較することをおすすめします。
資産額の帯別に見た現実的な選択肢
最低金額の一覧だけを見ても、自分が何を選ぶべきかは決まりません。資産額の帯ごとに、選択肢がどう変わるかを整理します。
純金融資産1億円前後の場合
外資系PBの3億円基準には届かず、日系証券系のPB部門が対象圏に入るかどうかの水準です。この帯では、PBを使うこと自体よりも、資産の置き場所を分散させないことのほうが効果を持ちます。
年1.41%の手数料は1億円で年141万円です。運用リターンでこれを回収する前提に立つと、期待値は厳しくなります。この帯では、証券会社の一般口座で低コストのインデックス投信を保有し、税務や承継が必要になった時点で個別に専門家へ依頼する形のほうが、総コストを抑えられるケースが多くなります。
純金融資産3億〜5億円の場合
公表基準を満たし、複数の選択肢が現実的に検討できる帯です。ここで判断を分けるのは、資産の構成です。
上場株式と現金が中心であれば、PBに集約する必然性は高くありません。一方、会社売却によって一度に数億円を得た直後や、非上場株式の承継が控えている場合は、資産全体を横断して設計できる窓口の価値が出てきます。会社売却後の資金をどう配分するかについては、手取り額別のパターンを整理した記事で詳しく扱っています。

純金融資産5億〜10億円以上の場合
複数のPBから提案を受けられ、料率の交渉余地も生まれる帯です。この規模になると、1社に全額を預けるのではなく、運用は複数に分散し、承継や税務の相談窓口を別に持つ構成が取られることも珍しくありません。
また、この帯では資産を売却せずに資金を確保する手段も選択肢に入ります。保有株式を担保に資金調達すれば、含み益への課税を発生させずに手元資金を作れるため、PBの提案する商品を購入する前に検討する価値があります。

| 純金融資産 | PBの対象可否 | 年間手数料の目安(年1.41%) | 現実的な検討順序 |
|---|---|---|---|
| 1億円前後 | 日系証券系が一部対象 | 141万円 | 低コスト運用を軸に、必要時のみ専門家へ個別依頼 |
| 3億〜5億円 | 外資系を含め対象圏 | 423万〜705万円 | 資産構成を確認し、承継の有無で判断 |
| 5億〜10億円 | ほぼ全ての系統が対象 | 705万〜1,410万円 | 複数社を比較し、料率と機能を分けて交渉 |
| 10億円超 | 条件交渉が可能 | 1,410万円〜 | 運用・承継・管理の窓口を分ける構成も検討 |
表3:資産額帯別の選択肢の整理
プライベートバンクの審査で見られるポイントは?
プライベートバンクの審査は、預入額の基準を満たしているかだけで決まるわけではありません。金融機関側は、その資産が今後も継続的に預けられるか、取引から適正な収益が見込めるかを見ています。
預入額以外に確認される項目
審査で確認される代表的な項目は次の通りです。金融機関によって重みは異なりますが、いずれも共通して問われます。
- 資産の出所(事業売却・相続・給与所得・投資収益などの資金源)
- 居住地と納税地(非居住者の場合は取扱いが変わる)
- 資産の構成(現金・上場株式・非上場株式・不動産の比率)
- 取引の継続見込み(一時的な入金か、長期の預入か)
- マネー・ローンダリング対策上の確認事項
特に資産の出所については、近年どの金融機関も確認を厳格化しています。会社売却で得た資金であれば株式譲渡契約書や税務申告書、相続であれば遺産分割協議書といった裏付け資料の提出を求められるのが通常です。
「一時的に基準額を満たす」やり方は機能しにくい
口座開設のために一時的に資金を集めて基準額を満たし、開設後に引き出す、という発想を耳にすることがあります。しかし多くの金融機関は月間平均残高や継続的な取引状況を条件として設定しており、残高が基準を下回った場合にサービス区分が変更される仕組みを持っています。
実際、SMBC信託銀行プレスティアが公開しているステータス条件では、「プレスティア ゴールドプレミアム」の適用に月間平均総取引残高5,000万円相当額以上かつ月間平均資産運用残高1,000万円相当額以上という、2つの条件を同時に満たすことが求められています(SMBC信託銀行プレスティア「ステータス」)。「月間平均」で判定される以上、一時的な入金では条件を満たせません。
契約前に確認すべき5項目
プライベートバンクとの契約前に確認しておくべき項目を、実務上の重要度が高い順に5つ挙げます。いずれも提案書の表面には書かれていないことが多く、担当者に直接質問する必要があります。海外PBを検討する場合は、これらに加えて前述の登録の有無を最初に確認してください。

1. 提示された料率は総経費率か、投資一任報酬のみか
金融庁のレポートが指摘する通り、手数料は複数の層に分かれています。提示された数字に信託報酬が含まれているかを確認しないと、実質コストを見誤ります。
2. 料率が逓減するラインはどこか
預かり資産が増えたときに、どの金額を境に料率が下がるのかを事前に確認します。境界が5億円なのか10億円なのかで、追加入金の判断が変わります。
3. 解約時の費用と資金の拘束期間
投資一任契約や仕組商品には、途中解約時の費用や一定期間の拘束が設定されている場合があります。出口の条件を先に確認します。
4. 運用以外に何を担ってもらえるのか
相続設計・事業承継・不動産の相談が契約に含まれるのか、別料金なのかを明確にします。ここが曖昧なまま契約すると、手数料の根拠が運用成績だけになります。
5. 担当者が交代したときの引継ぎ体制
PBの価値は担当者個人に依存しがちです。異動や退職の際にどう引き継がれるかを、契約前に確認しておきます。
これらを確認する過程で、金融機関側の回答が曖昧であれば、その時点で判断材料になります。富裕層が実際にどのような基準で相談先を選んでいるかについては、当メディアが実施した実態調査でも傾向が見えています。

基準に届かない場合の選択肢は?
PBの最低金額に届かない場合でも、資産管理の選択肢がなくなるわけではありません。むしろ、PB以外の手段のほうが総コストで有利になるケースは少なくありません。
資産を集約せずに機能だけを分けて確保する
PBの本質的な価値は、運用・税務・承継・不動産を一つの窓口で扱える点にあります。逆に言えば、これらを別々の専門家に分けて依頼すれば、同等の機能を残高比例の手数料なしで確保できます。
たとえば、運用は低コストの証券口座で自ら行い、税務は税理士へ、承継設計は別の専門家へ、という構成です。この方式は窓口が分散する手間が生じる一方、年間の固定費が資産残高に連動しないという明確な利点があります。5億円を10年預けた場合の7,050万円と比較すれば、差は明確です。
法人を使って資産を管理する
個人名義のまま運用を続けるのではなく、資産管理会社を設立して法人名義で保有する方法もあります。所得の分散や経費計上の余地が生まれるため、資産規模と所得水準によっては、PBの手数料を払うよりも手取りへの効果が大きくなることがあります。

セカンドオピニオンとして外部の目を入れる
すでにPBと取引している場合でも、提案内容を第三者に検証してもらう方法があります。PBの担当者は自社の商品を販売する立場にあるため、提案が最適解かどうかを本人が判断するのは構造的に難しいためです。契約を解約せずとも、提案書を別の専門家に見てもらうだけで、手数料の妥当性は確認できます。
プライベートバンクに関するよくある質問
- Q. プライベートバンクは1億円未満でも利用できますか?
-
A. 一般に、プライベートバンクとして専任担当者が付くサービスは1億円前後が下限です。ただし金融機関によっては、より低い金額帯向けに富裕層向けの区分サービスを設けている場合があります。SMBC信託銀行プレスティアの「ゴールドプレミアム」は月間平均総取引残高5,000万円相当額以上が条件です。
- Q. 海外のプライベートバンクのほうが最低金額は高いですか?
-
A. 一般的には日系より高い水準が目安とされますが、公表している金融機関は限られます。加えて、非居住者要件・現地への渡航・英語での契約書対応など、金額以外の条件が実質的な障壁になる場合があります。
- Q. 海外のプライベートバンクは手数料が安いのですか?
-
A. 「安い」と断定できる公開データはありません。各社とも手数料率を公表していないためです。ただし体系の設計思想には違いがあり、売買手数料を別建てにせず残高比例に一本化する体系が採られることがあります。この場合、取引の回転率が高いほど国内との差が出ます。判断する際は、税務申告や国外財産調書への対応にかかる費用まで含めた総コストで比較してください。
- Q. 海外のプライベートバンクを利用しても問題ありませんか?
-
A. 海外に口座を持つこと自体は適法です。ただし日本の居住者を相手に金融商品取引を業として行う場合、海外所在業者であっても金融商品取引業の登録が必要と金融庁が明示しています。無登録業者との取引では出金拒否等のトラブルが報告されているため、検討の初期段階で登録の有無を確認してください。
- Q. 手数料はどのくらい交渉できますか?
-
A. 預かり資産の規模が大きいほど交渉余地は生まれますが、下限は金融機関ごとに定められており、公開されていません。複数社から提案を受けて比較することが、実質的な交渉材料になります。
- Q. 最低金額を満たせば必ず口座を開設できますか?
-
A. できません。資産の出所の確認、居住地・納税地の要件、マネー・ローンダリング対策上の審査などが別途あり、金額基準を満たしても謝絶される場合があります。UBS SuMi TRUSTの案内にも「所定の審査」が必要と明記されています。
- Q. 手数料に見合うかは何で判断すればよいですか?
-
A. 運用成績だけで判断すると、年1.41%以上の超過リターンを継続的に求めることになり、現実的ではありません。相続・事業承継・非上場株式や不動産を含む資産全体の設計といった、運用以外の機能に価値を見出せるかで判断するのが実務的です。
まとめ
プライベートバンクの利用金額と、その手数料に見合うかどうかの判断軸を整理します。
- 公表された最低預入額はUBS SuMi TRUSTの「金融資産3億円相当以上」です
- 日系証券系は1億円前後が目安ですが、各社とも基準を公表していません
- 手数料は金融庁調査で年1.41〜1.74%、5億円なら10年で7,050万円の固定費です
- 運用リターンだけで手数料を回収する前提は現実的ではありません
- 判断軸は「承継・税務・非金融資産まで含めた設計を任せられるか」です
最低金額の一覧を眺めるより、自分の資産構成で年間数百万円の固定費に見合う機能が必要かを確かめるほうが、はるかに実益があります。基準を満たしていても使わない判断は十分に合理的ですし、基準に届かなくても機能を分けて確保する方法があります。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や投資助言を行うものではありません。記事内の情報は執筆時点のものであり、最新の状況とは異なる場合があります。実際の投資判断や税務上の判断については、資格を有する税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。



