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不動産投資が「節税にならない」と言われるのは、減価償却による節税が成立する条件を満たしていないケースが多いからです。具体的には、①そもそも所得税率が低い、②区分ワンルームで減価償却費が小さい、③土地取得の借入金利子が損益通算できない、④減価償却終了後にデッドクロスが起きる、⑤売却時の譲渡課税で節税分が取り戻される、という5つの失敗パターンがあります。逆に言えば、課税所得4,000万円超(所得税45%+住民税10%=55%)の高所得者が、建物比率の高い築古物件を、出口まで設計して保有すれば、節税は十分に成立します。この記事では、国税庁の規定にもとづいて「節税にならない」5つのケースを整理し、本当に効果を出すための正しい進め方を解説します。
この記事でわかること
- 不動産投資が節税にならない主因は減価償却の条件を満たさないことです
- 課税所得900万円未満では損益通算しても節税効果は限定的です
- 土地取得の借入金利子は損益通算の対象外という国税庁の規定があります
- 減価償却は「非課税」ではなく売却時まで含めた課税の繰り延べです
- 本当に効果が出るのは高税率×高建物比率×出口設計が揃った場合です
監修者
中島宏明
投資コラムニスト、経営者のゴーストライター(書籍、オウンドメディア、メルマガ、プレスリリース、社内報、スピーチ原稿、YouTubeシナリオ、論文…)
2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。2014年に一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。マイナビニュースで、投資・資産運用や新時代の働き方をテーマに連載中。
「不動産投資は節税にならない」と言われる理由とは?
「不動産投資は節税にならない」と言われる最大の理由は、減価償却で不動産所得を赤字にして損益通算する仕組みが、条件次第で機能しないからです。節税の仕組み自体は正しく存在しますが、その効果を得られる人・物件・出口の条件がそろわないと、期待した節税にはつながりません。
【用語解説】不動産投資の節税(減価償却×損益通算)とは
建物の取得費を耐用年数にわたって経費計上する「減価償却」で不動産所得を帳簿上の赤字にし、その赤字を給与所得等と相殺(損益通算)して所得税・住民税の課税ベースを圧縮する仕組みです。根拠は国税庁タックスアンサーNo.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」にあります。
ポイントは、減価償却費が「実際にはお金が出ていかないのに経費計上できる」費用である点です。この特性を活かせれば実際のキャッシュフローが黒字でも税務上は赤字にできますが、物件の建物比率が低かったり、そもそも適用税率が低かったりすると、この仕組みは十分に働きません。次章から、節税にならない5つのケースを具体的に見ていきます。
不動産投資が節税にならない5つのケース
不動産投資が節税にならないのは、大きく分けて5つのケースに集約されます。いずれも「仕組みを知らずに営業トークのまま購入した」ときに起こりやすい失敗です。
ケース①:そもそも所得税率が低く、損益通算の効果が小さい
不動産所得の赤字を損益通算しても、その人に適用される税率が低ければ、戻ってくる税金も小さくなります。所得税は課税所得が大きいほど税率が上がる超過累進課税です。国税庁タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」によれば、課税所得4,000万円超の税率は45%(住民税10%を合わせて55%)に達する一方、課税所得330万円以下は所得税10%程度にとどまります。
同じ100万円の不動産所得の赤字を通算しても、税率55%の人は約55万円が軽減されるのに対し、税率20%の人は約20万円しか軽減されません。不動産投資の節税は、高い税率が適用されている高所得者ほど効果が大きくなる仕組みであり、税率の低い層にとっては「割に合わない節税」になりがちです。
ケース②:区分ワンルームで減価償却費が小さい
新築の区分ワンルームマンションは、不動産投資の節税で最も「ならない」パターンの代表例です。理由は、建物価格に対して土地価格の割合が高く、さらに法定耐用年数が長いため、1年あたりの減価償却費が小さくなるからです。
減価償却の対象は建物部分のみで、土地は対象外です。国税庁タックスアンサーNo.2100「減価償却のあらまし」でも「土地や骨とう品などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません」と明記されています。新築RC造の耐用年数は47年と長く、建物価格3,000万円でも年間の減価償却費は約64万円にとどまります。これでは損益通算による節税効果はごくわずかです。
「新築ワンルームで節税」の営業トークに注意
新築区分ワンルームは減価償却費が小さく、節税目的には不向きなケースが多い物件です。にもかかわらず「節税になる」という訴求で販売されることがあります。減価償却費が家賃収入や経費を上回らなければ不動産所得は赤字にならず、損益通算そのものが発生しません。購入前に必ず年間の減価償却費と収支を試算してください。
ケース③:土地取得の借入金利子は損益通算できない
不動産所得が赤字でも、土地等を取得するための借入金利子に相当する部分は、損益通算の対象になりません。これは国税庁タックスアンサーNo.1391に明記された規定です。土地建物を一括ローンで購入した場合、支払利子を土地・建物の取得価額比で按分し、土地に対応する利子分は「損失がなかったもの」とみなされます。
フルローンで土地割合の大きい物件を購入すると、想定していた赤字額が税務上は圧縮され、節税効果が目減りします。「借入を増やせば増やすほど赤字が膨らんで得」という単純な理解は、この規定によって成り立ちません。
ケース④:減価償却が終わると「デッドクロス」で税負担が増える
築古の木造物件は短期間で減価償却できる反面、減価償却が終わった後もローンの元金返済は続くため、経費が消えて帳簿上の所得だけが急増する「デッドクロス」が起こります。減価償却費という現金を伴わない経費がなくなる一方、元金返済という現金支出は経費にならないため、「手元のキャッシュは苦しいのに税金は増える」状態に陥ります。
【用語解説】デッドクロスとは
減価償却費(経費になるが現金支出を伴わない)がローンの元金返済額(現金支出だが経費にならない)を下回る状態のことです。この状態になると、帳簿上の利益と実際の手残りキャッシュが逆転し、納税額が手元資金を圧迫します。減価償却期間の短い築古木造ほど早く訪れます。
節税効果が大きい物件ほど減価償却期間が短く、デッドクロスも早く訪れます。保有中の節税額だけを見て購入すると、数年後にこの逆回転で苦しむことになります。
ケース⑤:売却時の譲渡課税で節税分が取り戻される
最も見落とされやすいのが、売却時の譲渡所得税です。減価償却は「税金がなくなる」のではなく、売却時まで含めると「課税の繰り延べ」に過ぎないという構造があります。国税庁タックスアンサーNo.3252「取得費となるもの」では、「建物の取得費は、購入代金または建築代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額」と定められています。
つまり、減価償却で経費計上した分だけ売却時の取得費(簿価)が下がり、その分だけ譲渡益が大きくなります。保有中に圧縮した所得税を、売却時の譲渡所得税として一部支払い直す形になるのです。この出口まで含めて損得を計算しないと、「節税になったつもりが、トータルではほとんど得していなかった」という結果になりかねません。

本当に効果が出る「正しい不動産節税」の条件
ここまでの5つのケースを裏返すと、不動産投資の節税が本当に効果を出す条件が見えてきます。結論から言えば、「高い税率」×「大きな減価償却費」×「出口設計」の3つがそろったときに、はじめて節税が成立します。

①高い税率が適用される所得層であること
損益通算による軽減額は「赤字額×適用税率」で決まります。課税所得900万円超(所得税率33%以上)、とりわけ4,000万円超(税率55%)の層であれば、同じ赤字額でも戻ってくる税金が大きく、節税の実利が出ます。逆に、この税率帯に達していない層は、節税以外の目的(インカムゲイン・資産分散)で不動産を評価すべきです。
②建物比率が高く、耐用年数の短い物件を選ぶこと
減価償却費を大きくするには、建物価格の割合が高く、耐用年数が短い物件を選ぶことが重要です。国税庁タックスアンサーNo.5404「中古資産の耐用年数」によれば、法定耐用年数の全部を経過した中古資産は「法定耐用年数×20%」の簡便法で耐用年数を算定できます。
木造の法定耐用年数は22年のため、築22年を超える中古木造は「22年×20%=4.4年」、端数切り捨てで耐用年数4年となり、建物部分を4年で全額償却できます。区分ワンルーム(ケース②)とは正反対の、建物比率の高い築古木造一棟が、節税では有力な選択肢になります。
表1:構造別の法定耐用年数と、法定耐用年数を超過した中古物件の簡便法耐用年数
| 建物構造 | 法定耐用年数 | 築年数超過時の簡便法耐用年数 |
|---|---|---|
| 木造 | 22年 | 4年(22年×20%) |
| 軽量鉄骨(厚み3mm以下) | 19年 | 3年(19年×20%) |
| 重量鉄骨(厚み4mm超) | 34年 | 6年(34年×20%) |
| RC造(鉄筋コンクリート) | 47年 | 9年(47年×20%) |
短期間で大きな節税を狙うなら木造、長期の安定運用と両立したいならRC造という住み分けになります。耐用年数が短いほど1年あたりの減価償却費は大きくなりますが、その分だけデッドクロスも早く訪れる点は必ず織り込んでください。
③出口(売却時)まで含めてトータルで設計すること
ケース⑤で見たとおり、減価償却は課税の繰り延べです。したがって「保有中の節税額」と「売却時の譲渡所得税」を合算して、トータルで得になるかを判断する必要があります。譲渡所得税は所有期間で税率が大きく変わります。
表2:不動産売却時の譲渡所得税率(所有期間別)
| 所有期間(売却年1月1日時点) | 区分 | 税率(所得税+住民税+復興特別所得税) |
|---|---|---|
| 5年以下 | 短期譲渡所得 | 39.63% |
| 5年超 | 長期譲渡所得 | 20.315% |
※国税庁タックスアンサーNo.3211「短期譲渡所得の税額の計算」に基づく。所有期間の判定は売却した年の1月1日時点で行われるため、実質的に5年6ヶ月程度の保有が必要になります。
保有中に高い所得税率(55%)で節税し、5年超保有してから長期譲渡(20.315%)で売却できれば、繰り延べた税金の一部を低い税率で精算でき、税率差(55%−20.315%)分がそのまま実利になります。減価償却の大きい築古木造を、短期譲渡(39.63%)で慌てて売ると、この税率差メリットを取り逃します。
実際にどのくらい節税になるのか、数字で確かめる
「節税になる/ならない」を感覚で判断せず、必ず自分の課税所得帯・物件条件で実額を試算することが重要です。課税所得帯別・建物価格別の具体的な節税額の試算は、別記事で詳しく解説しています。
課税所得帯(43%〜55%)別に、築22年超の木造アパートを取得した場合の年間節税額をシミュレーションした記事では、同じ物件でも税率帯によって節税額が年間530万円〜680万円台まで変わることを実額で示しています。自分のケースに近い数字を確認したい方は、あわせてご覧ください。

個人と法人(資産管理会社)、どちらで持つべきか
不動産投資の節税を突き詰めると、「個人で持つか、法人(資産管理会社)で持つか」という論点に行き着きます。課税所得が大きい高所得者ほど、法人化によって選択肢が広がるケースがあります。
個人の場合、不動産所得の赤字は給与所得等と損益通算できますが、土地取得の借入金利子は通算対象外です(ケース③)。一方、法人は不動産の損益を他の事業損益と一体で通算でき、赤字(欠損金)を翌期以降に繰り越せる期間も個人より長く設定されています。所得の分散(家族への役員報酬)や相続対策まで視野に入れると、法人が有利になる場面は少なくありません。
ただし、法人化には設立コスト・維持コスト・社会保険の負担が伴い、規模が小さいうちは割高になります。個人と法人のどちらが有利かは、課税所得の規模・保有物件数・相続の有無によって変わるため、シミュレーションのうえで判断すべき論点です。
不動産投資が節税にならないケースに関するよくある質問
- 年収500万円の会社員でも不動産投資で節税になりますか?
-
損益通算の仕組み自体は会社員でも利用できますが、適用される税率が低いため節税効果は限定的です。課税所得が900万円に届かない層では、戻ってくる税金が小さく、購入・保有コストに見合わないことが多くなります。節税以外の目的(家賃収入・資産分散)で評価するのが現実的です。
- 新築ワンルームマンションは節税になりませんか?
-
新築区分ワンルームは建物比率が低く、耐用年数も長いため、1年あたりの減価償却費が小さく、節税目的には不向きなケースが多い物件です。減価償却費が家賃収入や経費を上回らなければ不動産所得は赤字にならず、損益通算そのものが発生しません。
- 減価償却で節税できるなら、売らずに持ち続ければ得ですか?
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減価償却が終わるとデッドクロスが発生し、キャッシュフローが悪化したまま税負担が増える状態になりやすくなります。減価償却の大きい築古物件は、5年超保有して長期譲渡(20.315%)で売却する出口を前提に設計するのが一般的です。持ち続ければ得とは限りません。
- 減価償却は結局「課税の繰り延べ」なら意味がないのですか?
-
意味がないわけではありません。保有中は高い所得税率(最大55%)で節税し、売却時は長期譲渡(20.315%)で精算できれば、税率差がそのまま実利になります。加えて、繰り延べた資金を運用に回せる時間的メリットもあります。出口の税率を下げる設計ができるかどうかが分かれ目です。
- 土地の借入金利子が損益通算できないとは、どういう意味ですか?
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不動産所得が赤字のとき、土地を取得するための借入金利子に相当する部分は「損失がなかったもの」とみなされ、給与所得などと相殺できないという国税庁の規定です(No.1391)。土地建物を一括ローンで買うと、土地分の利子は節税に使えないため、想定より効果が小さくなります。
まとめ
「不動産投資は節税にならない」と言われる背景と、本当に効果を出すための要点は以下の5点です。
- 節税にならない主因は、低い税率・小さい減価償却費・土地利子の通算不可・デッドクロス・出口の譲渡課税の5つです
- 課税所得900万円未満では損益通算しても効果が小さく、節税以外の目的で評価すべきです
- 新築区分ワンルームは建物比率が低く減価償却費が小さいため節税に不向きです
- 減価償却は非課税ではなく、売却時まで含めた「課税の繰り延べ」である点を理解する必要があります
- 高税率×高建物比率の築古物件×長期譲渡での出口設計がそろって、はじめて節税が成立します
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や投資助言を行うものではありません。記事内の情報は執筆時点のものであり、最新の状況とは異なる場合があります。実際の投資判断や税務上の判断については、資格を有する税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。



