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不動産投資の節税効果は、中古物件の減価償却費によって不動産所得を意図的に赤字化し、給与所得など他の所得と損益通算することで生まれます。課税所得4,000万円超(所得税45%+住民税10%=55%)の層であれば、建物価格6,000万円・築22年超の木造中古物件で年間1,500万円の減価償却費を計上でき、節税額は年間600万円規模に達するケースもあります。ただし効果は年収帯・物件構造・築年数によって大きく変わり、減価償却が終わる4〜5年目以降は逆に税負担が増える「デットクロス」にも注意が必要です。この記事では、純金融資産5億円以上の高所得者を想定した実額シミュレーションを軸に、節税が成立する仕組みと出口戦略までを具体的な数字で解説します。
この記事でわかること
- 不動産投資の節税は減価償却費による所得の圧縮と損益通算で成立します
- 課税所得帯(43%〜55%)別の節税効果は年間530万円〜680万円台です
- 建物価格別の減価償却効果は同じ税率でも年間400万円〜1,200万円超まで差が出ます
- 土地取得のための借入金利子は損益通算の対象外になる点に注意が必要です
- 減価償却が終わる4〜5年目以降は税負担が増える「デットクロス」への備えが必要です
監修者
中島宏明
投資コラムニスト、経営者のゴーストライター(書籍、オウンドメディア、メルマガ、プレスリリース、社内報、スピーチ原稿、YouTubeシナリオ、論文…)
2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。2014年に一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。マイナビニュースで、投資・資産運用や新時代の働き方をテーマに連載中。
不動産投資の節税とは?成立する仕組みを解説
不動産投資の節税とは、中古物件の減価償却費を大きく計上して不動産所得を赤字にし、給与所得など他の所得と損益通算することで、全体の課税所得を圧縮する仕組みです。売却益を狙う投資とは異なり、あくまで「保有期間中の所得税・住民税の圧縮」を目的とした活用法になります。
【用語解説】不動産投資の節税(減価償却×損益通算)とは
建物の取得費用を耐用年数にわたって経費計上する「減価償却」により、帳簿上の不動産所得を赤字にし、その赤字を給与所得等と相殺(損益通算)することで、所得税・住民税の課税ベースを圧縮する仕組みです。国税庁タックスアンサーNo.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」に根拠規定があります。
この仕組みが機能する最大のポイントは、減価償却費が「実際にお金が出ていかないのに経費計上できる」費用である点です。家賃収入や借入金利子・管理費などのキャッシュの動きとは別に、帳簿上の所得だけを引き下げられるため、実際のキャッシュフローが黒字でも税務上は赤字にできるケースが生まれます。
減価償却費が大きくなる物件の条件
減価償却費を大きくするには、①建物価格の割合が高い、②耐用年数が短い、の2条件を満たす物件を選ぶことが重要です。国税庁タックスアンサーNo.5404「中古資産の耐用年数」によれば、法定耐用年数の全部を経過した中古資産は「法定耐用年数×20%」という簡便法で耐用年数を算定できます。
木造の法定耐用年数は22年のため、築22年を超える中古木造物件は「22年×20%=4.4年」、端数切り捨てで耐用年数4年になります。取得価格のうち建物部分を4年で全額償却できるため、木造の中古物件は不動産投資の節税で最も選ばれやすい選択肢です。
| 建物構造 | 法定耐用年数 | 築年数超過時の簡便法耐用年数 |
|---|---|---|
| 木造 | 22年 | 4年(22年×20%) |
| 軽量鉄骨(厚み3mm以下) | 19年 | 3年(19年×20%) |
| 重量鉄骨(厚み4mm超) | 34年 | 6年(34年×20%) |
| RC造(鉄筋コンクリート) | 47年 | 9年(47年×20%) |
表1:構造別の法定耐用年数と中古(築年数超過)時の簡便法耐用年数
短期間で大きな節税効果を狙うなら木造、長期の安定運用と節税を両立したいならRC造という住み分けになります。耐用年数が短いほど1年あたりの減価償却費は大きくなりますが、その分だけ節税効果が続く期間も短くなる点に注意が必要です。
不動産投資における課税所得帯別の節税シミュレーション
課税所得帯によって適用される税率が異なるため、同じ物件・同じ赤字額でも節税効果には大きな差が生まれます。ここでは築22年超の中古木造アパート(取得価格8,000万円・建物6,000万円/土地2,000万円)を例に試算します。
シミュレーションの前提条件
- 取得価格8,000万円(建物6,000万円・土地2,000万円)、築22年超の木造アパート
- 借入6,000万円(建物取得分に充当・金利2%)、年間利子120万円
- 年間家賃収入480万円(表面利回り6%想定)
- 管理費・固定資産税等の経費(減価償却費を除く)年間100万円
- 建物の減価償却費:6,000万円÷4年=年間1,500万円
このケースでの不動産所得は「480万円(家賃収入)-100万円(経費)-120万円(借入金利子)-1,500万円(減価償却費)=マイナス1,240万円」となります。この赤字1,240万円を課税所得帯別に損益通算した場合の節税額は以下の通りです。

| 課税所得帯 | 適用税率(所得税+住民税) | 節税額(概算) |
|---|---|---|
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33%+10%=43% | 約533万円 |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40%+10%=50% | 約620万円 |
| 4,000万円超 | 45%+10%=55% | 約682万円 |
表2:課税所得帯別の節税効果シミュレーション(赤字1,240万円を通算した場合)
※上表は国税庁タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」に基づく概算です。実際の税額は各種所得控除・復興特別所得税・他の所得の状況によって変動するため、必ず税理士に個別試算をご依頼ください。
課税所得900万円台と4,000万円超では、同じ物件・同じ赤字額でも節税効果に150万円近い差が出ます。不動産投資の節税は、税率の高い高所得者ほど効果が大きくなる仕組みであり、これが「節税目的の不動産投資は高所得者向け」と言われる理由です。
物件価格別の減価償却シミュレーション
物件価格(建物価格)が大きいほど、1年あたりの減価償却費も大きくなります。ここでは課税所得4,000万円超(税率55%)の層を前提に、建物価格別の減価償却効果を試算します。
| 建物価格 | 年間減価償却費 | 減価償却分の概算節税効果 |
|---|---|---|
| 3,000万円 | 750万円 | 約413万円 |
| 6,000万円 | 1,500万円 | 約825万円 |
| 9,000万円 | 2,250万円 | 約1,238万円 |
表3:建物価格別の減価償却額と概算節税効果(築22年超木造・耐用年数4年・税率55%の場合)
※本表は減価償却費のみに着目した簡易試算です(家賃収入・経費・借入金利子は考慮していません)。実際の不動産所得・節税額は表2のように家賃収入等を含めて計算する必要があります。

不動産投資の節税で見落としがちな2つの注意点
不動産投資の節税シミュレーションを行う際、多くの試算サイトで見落とされがちな2つの注意点があります。ここを理解せずに実行すると、想定した節税効果が得られないばかりか、後年に税負担が急増するリスクがあります。
①土地取得の借入金利子は損益通算の対象外
不動産所得が赤字の場合でも、土地等を取得するための借入金利子に相当する部分は損益通算の対象になりません。国税庁タックスアンサーNo.1391に明記されている規定で、土地建物を一括のローンで取得した場合は、利子額を土地・建物の取得価額比で按分し、土地分に対応する利子は「損失がなかったもの」とみなされます。
土地の借入割合が大きい物件は損益通算の効果が薄れる
本記事のシミュレーションでは借入を建物取得分に充当する設計のため利子全額が通算対象ですが、実務では土地・建物を一括ローンで取得するケースが多くあります。その場合、土地分の利子は通算対象外となり、想定より節税効果が小さくなる可能性があります。ローンの組み方・按分計算は税理士に事前確認することをおすすめします。
②減価償却が終わる4〜5年目以降の「デットクロス」
木造中古物件は耐用年数4年で減価償却が終了しますが、借入金の元金返済(キャッシュアウト)はその後も続きます。減価償却という経費が消える一方でローン返済は継続するため、帳簿上の所得が急増し、税負担が跳ね上がる「デットクロス」という現象が起こります。
減価償却期間中は節税効果を享受できても、その後は一転して「キャッシュフローは変わらないのに税金だけ増える」状態になりやすいため、売却によって出口を取る前提でシミュレーションを組むことが重要です。
不動産の売却時の税金も含めたトータルシミュレーション
不動産投資の節税を評価する際は、保有中の節税効果だけでなく、売却時の譲渡所得税まで含めたトータルで判断する必要があります。不動産の譲渡所得税は所有期間によって税率が大きく異なります。
| 所有期間 | 区分 | 税率(所得税+住民税+復興特別所得税) |
|---|---|---|
| 5年以下(売却年1月1日時点) | 短期譲渡所得 | 39.63% |
| 5年超(売却年1月1日時点) | 長期譲渡所得 | 20.315% |
表4:不動産売却時の譲渡所得税率(所有期間別)
※国税庁タックスアンサーNo.3211「短期譲渡所得の税額の計算」に基づく。所有期間の判定は売却した年の1月1日時点で行われるため、実質的に5年6ヶ月程度の保有が必要になる点に注意してください。
耐用年数4年の木造物件は、減価償却のメリットを最大限享受した後、短期譲渡(39.63%)で慌てて売却すると譲渡益に対する税負担が重くなります。保有中の節税効果と、5年超保有してから長期譲渡(20.315%)で売却した場合の税負担を合わせて試算することが、不動産投資の節税を成功させる鍵になります。

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不動産投資の節税に向いている人・向いていない人
不動産投資の節税は、すべての人に効果があるわけではありません。課税所得帯・保有期間・出口戦略への理解度によって、効果が大きく変わります。
向いている人の条件
- 課税所得900万円を超え、高い税率が適用されている
- 減価償却終了後の税負担増加(デットクロス)を織り込んだ資金計画ができる
- 5年超の保有を前提に、長期譲渡所得の税率で売却する出口戦略を描ける
- 物件選定・融資・管理を任せられる専門家のネットワークを持っている
向いていない人の条件
- 課税所得が低く、そもそも高い税率区分に達していない
- 目先の節税額だけを見て、デットクロスや売却時の税負担を考慮していない
- 物件の実質的な収益性(賃料相場・空室リスク)より節税効果を優先してしまう
不動産投資の節税は、あくまで「本業の収益がしっかりある高所得者が、余剰資金の一部で行う税務戦略」として位置づけるのが本来の姿です。減価償却を活用した不動産節税に加えて、資産管理会社(法人)を組み合わせることでさらに選択肢が広がるケースもあります。
不動産投資 節税シミュレーションに関するよくある質問
- 新築物件でも不動産投資の節税効果はありますか?
-
新築物件は法定耐用年数がそのまま適用されるため(木造なら22年)、1年あたりの減価償却費は中古物件より小さくなります。短期間で大きな節税効果を狙う目的であれば、築年数が法定耐用年数を超えた中古物件の方が適しています。
- サラリーマンでも不動産投資の節税シミュレーションは有効ですか?
-
給与所得と不動産所得の損益通算という仕組み自体は、会社員・個人事業主を問わず利用できます。ただし節税効果は適用される税率次第のため、課税所得が低い層では効果が限定的です。年収や他の所得状況を踏まえた個別試算をおすすめします。
- 減価償却が終わったらどうすればいいですか?
-
減価償却が終了すると帳簿上の所得が増え、税負担が上がる「デットクロス」が発生しやすくなります。対策としては、5年超保有してから長期譲渡所得の税率(20.315%)で売却する、あるいは次の物件に買い替えて再度減価償却期間を確保する方法が一般的です。いずれも税理士との事前シミュレーションが不可欠です。
- 法人(資産管理会社)で不動産投資をした方が節税効果は大きいですか?
-
法人は個人と異なり、不動産の損益をすべての事業損益と一体で通算でき、欠損金を最大10年間繰り越せるなどの違いがあります。課税所得の規模や保有目的によって個人・法人どちらが有利かは変わるため、比較検討には専門家への相談が有効です。
- 減価償却費以外に、不動産投資で経費計上できるものは何ですか?
-
管理費・修繕費・固定資産税・都市計画税・借入金利子(建物取得分)・火災保険料・税理士報酬などが必要経費として計上できます。ただし土地取得のための借入金利子は損益通算の対象外になるため、按分計算に注意が必要です。
まとめ
不動産投資の節税シミュレーションの要点は以下の5点です。
- 節税効果は減価償却費による所得圧縮と損益通算で成立し、課税所得帯が高いほど効果が大きくなります
- 築22年超の木造中古物件は耐用年数4年で減価償却でき、短期間で大きな節税効果を得やすい選択肢です
- 建物価格別の減価償却効果は税率55%の場合で年間400万円台〜1,200万円台まで差が出ます
- 土地取得の借入金利子は損益通算の対象外という点を必ず考慮してシミュレーションする必要があります
- 減価償却終了後のデットクロスと売却時の譲渡所得税まで含めたトータル設計が節税成功の鍵です
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や投資助言を行うものではありません。記事内の情報は執筆時点のものであり、最新の状況とは異なる場合があります。実際の投資判断や税務上の判断については、資格を有する税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。


