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法人の節税で最も効果が大きいのは、「支出を経費に変える」小手先の対策ではなく、「将来のキャッシュアウトを合法的に繰り延べ・圧縮する」制度型の対策です。具体的には、①役員退職金、②経営セーフティ共済、③生命保険、④資産管理会社の活用という4つが、課税所得の大きい法人オーナーにとって特に効果の大きい対策になります。交際費や消耗品費といった経費計上型のテクニックは即効性がある一方、節税額には上限があります。この記事では、国税庁・中小企業基盤整備機構の一次情報にもとづき、富裕層の会社オーナーが実際に活用している7つの節税対策を、実額試算とあわせて解説します。
この記事でわかること
- 法人税の軽減税率は年800万円以下の所得部分に適用される15%です
- 役員退職金は功績倍率法で算定した適正額まで損金算入できます
- 経営セーフティ共済は年240万円・累計800万円まで全額損金にできます
- 解約後の再加入は2年間、掛金が損金算入できなくなる改正があります
- 資産管理会社の設立は所得分散・相続対策まで含めた総合的な節税策です
監修者
中島宏明
投資コラムニスト、経営者のゴーストライター(書籍、オウンドメディア、メルマガ、プレスリリース、社内報、スピーチ原稿、YouTubeシナリオ、論文…)
2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。2014年に一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。マイナビニュースで、投資・資産運用や新時代の働き方をテーマに連載中。
法人の節税対策とは?まず押さえるべき税率の仕組み
法人の節税対策とは、法人税法上認められた範囲で損金(税務上の経費)を計上し、課税所得を圧縮することで納税額を抑える取り組みです。個人の所得税と異なり、法人税には累進性がほとんどないため、税率構造そのものを理解しておくことが節税設計の出発点になります。
【用語解説】法人の節税とは
法人税法上の損金算入ルールに従って費用・引当金・共済掛金などを計上し、課税所得を適法に圧縮する取り組みです。売上を隠す・架空経費を計上するといった脱税とは明確に異なり、制度の範囲内で「使えるものを使う」対応を指します。
中小法人(資本金1億円以下)は、年800万円以下の所得部分に軽減税率15%、超過部分に23.2%の本則税率が適用されます(国税庁タックスアンサーNo.5759「法人税の税率」)。つまり年800万円を超える所得には実効税率で30%台の税負担がかかるため、利益が出ている法人ほど、この超過部分をいかに圧縮するかが節税の肝になります。
ただし、前3事業年度の平均所得が15億円を超える法人(適用除外事業者)は軽減税率の対象外となり、さらに当期所得が10億円を超える事業年度は軽減税率自体が15%から17%に引き上げられます。規模の大きい法人オーナーほど、単純な税率メリットより後述する制度型の対策の重要性が増します。
制度型の節税対策4選:将来のキャッシュアウトを合法的に繰り延べる
制度型の節税対策とは、退職金・共済・保険・法人設立といった制度を活用し、まとまった金額を計画的に損金化していく方法です。1回あたりの節税インパクトが大きく、複数年にわたる資産形成とセットで設計できる点が特徴です。
①役員退職金を活用する
役員退職金は、法人の節税策の中で最も1回あたりの損金算入額が大きくなり得る方法です。オーナー経営者が勇退時にまとまった退職金を受け取ることで、法人側は大きな損金を計上でき、個人側も退職所得として税制上有利な扱いを受けられます。
役員退職金の損金算入時期は、原則として株主総会の決議等によって金額が具体的に確定した事業年度です(国税庁タックスアンサーNo.5208「役員の退職金の損金算入時期」)。取締役会で内定しただけで未払金に計上しても、金額が確定していなければ損金にはならない点に注意が必要です。
適正額の目安は「功績倍率法」
役員退職金には法律上の明確な上限額はありませんが、社会通念上「不相当に高額」と判断された部分は損金不算入となります。実務では、退任時の最終月額報酬・在任年数・功績倍率を掛け合わせる「功績倍率法」が広く使われています。
| 役職 | 目安の功績倍率 | 計算式 |
|---|---|---|
| 代表取締役 | 3.0倍 | 最終月額報酬×在任年数×3.0 |
| 専務取締役 | 2.5倍 | 最終月額報酬×在任年数×2.5 |
| 常務取締役 | 2.2倍 | 最終月額報酬×在任年数×2.2 |
| 取締役 | 1.8倍 | 最終月額報酬×在任年数×1.8 |
表1:功績倍率法の考え方と役職別の目安倍率
例えば、最終月額報酬200万円・在任年数25年の代表取締役であれば、200万円×25年×3.0倍で役員退職金の目安は約1億5,000万円となります。
この金額は法人側の損金であると同時に、個人側では給与所得より税負担が軽い退職所得として扱われるため、法人・個人の両面で節税効果を持ちます。功績倍率はあくまで実務上の目安であり、同業他社の支給水準や会社の業績とのバランスで税務調査の争点になり得るため、算定にあたっては税理士への相談が一般的です。

②経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)に加入する
経営セーフティ共済(正式名称:中小企業倒産防止共済)は、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための共済制度でありながら、掛金の全額を損金に算入できるため、節税策としても広く活用されています。制度を運営する独立行政法人中小企業基盤整備機構によれば、掛金は月額5,000円〜20万円の範囲で自由に設定でき、累計800万円になるまで積み立てられます(中小企業基盤整備機構「経営セーフティ共済 制度の概要」)。
掛金は法人であれば全額損金、個人事業主であれば必要経費に算入できるため、月額上限の20万円で加入すれば年間最大240万円を損金にできます。さらに、40ヶ月以上納付していれば解約時に掛金全額が戻ってくるため、「損金にしながら積み立てる」実質的な内部留保としても機能します。
2024年10月改正:解約後2年間は再加入しても損金算入できない
令和6年度税制改正により、2024年10月1日以降に共済契約を解約した場合、解約日から2年を経過するまでの間に再加入して支払う掛金は、損金または必要経費に算入できなくなりました。かつては「解約して掛金を受け取り、すぐに再加入して再び損金化する」短期的な節税目的の利用が可能でしたが、この改正でその手法は封じられています。加入・解約のタイミングは税理士に確認のうえ判断してください。
解約時に受け取る共済金は益金(法人の収入)として課税対象になるため、役員退職金の支給時期に合わせて解約するなど、損金と益金の発生タイミングをずらす「出口設計」が節税効果を最大化するポイントです。
③生命保険を活用する
法人契約の生命保険は、保障機能を持ちながら保険料の一部または全部を損金にできるため、退職金の原資準備と節税を同時に実現する手段として使われています。ただし、2019年(令和元年)の通達改正以降、保険の種類によって損金算入できる割合が大きく変わっている点に注意が必要です。
保険期間が3年以上の定期保険・第三分野保険のうち、解約返戻金の割合(最高解約返戻率)が50%を超えるものは、その割合に応じて損金算入が制限される取り扱いになっています(国税庁タックスアンサーNo.5364「定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い」)。かつて主流だった「保険料の大半を損金にしながら高い返戻率で積み立てる」全額損金型の保険商品は、この改正でほぼ姿を消しました。
現在は、最高解約返戻率50%以下の保険や、保険期間が短期の商品を組み合わせ、保障・退職金準備・損金算入のバランスを設計する提案が主流です。商品ごとに損金算入割合の区分が細かく分かれているため、実際の契約にあたっては保険会社・税理士から契約前に区分と損金算入割合の説明を必ず受けてください。
④資産管理会社を活用した所得分散・相続対策
個人で保有する事業・資産の一部を資産管理会社(プライベートカンパニー)に移し、家族を役員にして役員報酬を分散させる、あるいは相続時の株式評価を圧縮する手法も、富裕層オーナーが実践する節税策の代表格です。
個人の所得税は最高45%の累進課税ですが、法人税は前述のとおり実効税率30%台で頭打ちになります。資産管理会社を経由することで、所得の一部を法人税率で確定させたり、複数の家族役員に報酬を分散して各人の税率を下げたりする効果が期待できます。資産管理会社を使った具体的な節税シミュレーションや設立手続きは、以下の記事で詳しく解説しています。

なお、資産管理会社の活用は節税だけでなく、事業承継・相続対策とも密接に関わります。不動産や有価証券を法人名義にすることで、相続財産の評価方法が変わり、結果として相続税の負担が軽くなるケースがあります。ただし設立・維持コストや社会保険料の負担も発生するため、資産規模とのバランスで判断すべき論点です。
経費計上型の節税対策3選:日々の運用で確実に積み上げる
経費計上型の節税対策とは、役員報酬・設備投資・社宅制度など、日常的な経営判断の中で損金を積み上げていく方法です。制度型ほど1回の効果は大きくありませんが、毎年確実に実行でき、制度型の対策と組み合わせることで節税効果を底上げできます。
⑤役員報酬を最適化する
役員報酬は法人の損金である一方、受け取る個人には給与所得として所得税・住民税がかかります。法人税率と個人の所得税率の差を利用し、法人に利益を残すか役員報酬として個人に移すかのバランスを調整することが、役員報酬の節税設計の基本です。
個人の所得税は課税所得900万円を超えると税率33%、4,000万円超では45%(住民税と合わせて55%)に達します(国税庁タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」)。法人の実効税率(30%台)を上回る税率帯に個人所得が達している場合、役員報酬を増やしすぎるとかえって世帯全体の税負担が増えることになります。法人と個人、双方の税率のバランスを見ながら報酬額を設定する必要があります。
⑥少額減価償却資産の特例を使う
中小企業者(資本金1億円以下等の要件を満たす青色申告法人)が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、通常の減価償却をせず、その事業年度に全額を損金算入できる特例があります(国税庁タックスアンサーNo.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」)。この特例には年間合計300万円までという上限があります。
パソコン・什器備品・応接セットなど、日常的に発生する設備投資をこの特例で即時償却すれば、通常なら数年にわたって分割計上される費用を、その年の損金として一括計上できます。決算期末に利益が想定より大きく出そうな場合、必要な設備投資を前倒しして活用する使い方が一般的です。
⑦社宅制度・出張旅費規程を整備する
役員社宅と出張旅費規程は、いずれも「実費弁償」の考え方に基づき、個人の税負担を増やさずに法人の損金を積み上げられる制度型の対策です。
役員社宅は、会社が物件を借り上げて役員に貸与し、国税庁の定める算定式による「賃貸料相当額」を役員から徴収すれば、給与課税されずに家賃の大部分を法人の損金にできます。出張旅費規程を整備し、実費とは別に日当を支給する仕組みも、規程に基づく支給であれば法人の損金・個人の非課税所得として扱われます。いずれも規程の整備と運用実態の一致が前提となるため、導入時は税理士に規程内容を確認してもらうことが重要です。
7つの対策を組み合わせた場合の効果イメージ
ここまで紹介した7つの対策は、単体でも効果がありますが、課税所得の規模に応じて複数を組み合わせることで、圧縮できる所得の幅が大きく広がります。特に役員退職金・経営セーフティ共済・資産管理会社の3つは、それぞれ損金が発生するタイミングが異なるため、複数年にわたる節税計画として設計しやすい組み合わせです。

例えば、経営セーフティ共済に年240万円を10年間積み立てれば、累計2,400万円(上限800万円到達後は掛金を止めるか、他の対策に切り替える)を損金にしながら資金を留保できます。この間に生命保険で退職金原資の一部を準備し、勇退時には功績倍率法で算定した役員退職金をまとめて損金計上する、という設計です。それぞれの対策が「いつ損金になり、いつ益金・課税所得になるか」を年単位で管理することが、単発の節税テクニックと最強の節税戦略を分ける違いになります。
法人の節税対策に関するよくある質問
- 法人の節税で最も効果が大きい方法はどれですか?
-
一律には言えませんが、法人オーナーにとっては役員退職金が1回あたりの損金額が最も大きくなりやすい方法です。ただし退職金は勇退時にしか使えないため、経営セーフティ共済や生命保険のように毎年コツコツ損金を積み上げられる対策と組み合わせるのが実務的です。
- 経営セーフティ共済はいつでも自由に解約・再加入できますか?
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解約自体はいつでも可能ですが、2024年10月以降の改正により、解約してから2年を経過するまでに再加入して支払う掛金は損金算入できません。短期的な節税目的での解約・再加入は制度上封じられているため、加入・解約のタイミングは慎重に検討してください。
- 生命保険の節税効果は今も昔と同じですか?
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異なります。2019年の通達改正により、解約返戻率の高い定期保険等は損金算入割合が制限されるようになりました。かつてのような「保険料の大半を損金にしながら高い返戻率で積み立てる」全額損金型の商品は、現在はほぼ利用できません。
- 資産管理会社を作れば必ず節税になりますか?
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資産や所得の規模によります。設立・維持コストや社会保険料の負担が発生するため、規模が小さいうちは割高になるケースもあります。所得分散効果や相続対策としてのメリットを含めて、シミュレーションのうえで判断すべき論点です。
- 少額減価償却資産の特例には上限がありますか?
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あります。取得価額30万円未満の資産が対象で、年間合計300万円までが即時償却の上限です。300万円を超える部分は通常の減価償却ルールに従うことになります。
まとめ
法人の最強節税対策として紹介した7つの方法の要点は以下のとおりです。
- 法人税は年800万円超の所得部分に実効税率30%台がかかるため、超過部分の圧縮が節税の主戦場です
- 役員退職金は功績倍率法による適正額まで損金算入でき、法人・個人双方で節税効果があります
- 経営セーフティ共済は年240万円・累計800万円まで全額損金にできますが、解約後2年間の再加入には制限があります
- 生命保険は2019年の改正で全額損金型が制限され、返戻率と保障のバランス設計が主流になっています
- 資産管理会社の活用は所得分散・相続対策まで含めた総合的な節税策として検討する価値があります
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や投資助言を行うものではありません。記事内の情報は執筆時点のものであり、最新の状況とは異なる場合があります。実際の投資判断や税務上の判断については、資格を有する税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。



