ストックオプションにかかる税金|税制適格・非適格の違いと確定申告を解説

ストックオプションの税制適格・非適格による税金の違いを示すアイキャッチ図解

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ストックオプションの税金は、税制適格か税制非適格かによって課税のタイミングと税率がまったく異なります。税制適格ストックオプションは株式を売却するまで課税が繰り延べられ、譲渡所得として20.315%の税率が適用されるのに対し、税制非適格ストックオプションは権利行使時に給与所得等として課税され、その後の売却時にも譲渡所得として課税される二段階課税の仕組みです。

この記事では、税制適格・非適格それぞれの課税タイミングと税額の計算方法を、株価が急騰した場合の具体的な試算例とともに整理し、確定申告が必要になるケース・不要なケースまで解説します。

この記事でわかること

  • 税制適格ストックオプションは株式売却時まで課税が繰り延べられ、譲渡所得として20.315%課税されます。
  • 税制非適格ストックオプションは権利行使時に給与所得等、売却時に譲渡所得の二段階で課税されます。
  • 株価急騰局面では税制適格と非適格で手取り額に大きな差が生じます。
  • 確定申告は特定口座(源泉徴収あり)で完結する場合を除き、原則として必要です。
  • 令和6年度税制改正で税制適格の年間権利行使価額の上限が引き上げられました。
中島宏明

監修者

中島宏明

投資コラムニスト、経営者のゴーストライター(書籍、オウンドメディア、メルマガ、プレスリリース、社内報、スピーチ原稿、YouTubeシナリオ、論文…)

2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。2014年に一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。マイナビニュースで、投資・資産運用や新時代の働き方をテーマに連載中。

目次

ストックオプションとは?権利行使と税金の関係

ストックオプションとは、あらかじめ定められた価格(権利行使価額)で自社株式を取得できる権利であり、税金の扱いは権利を取得した時点ではなく、権利を行使した時点・株式を売却した時点で発生します。

【用語解説】ストックオプションとは
会社が役員・従業員等に付与する、あらかじめ定めた価格(権利行使価額)で自社株式を取得できる権利(新株予約権)です。株価が権利行使価額を上回っている状態で権利行使すると、その差額分が経済的な利益になります。税制上の要件を満たすかどうかで「税制適格」と「税制非適格」に区分されます。

半導体・AI関連株のように株価が短期間で急騰しやすい銘柄を扱う企業では、ストックオプションの権利行使によって数千万円〜数億円規模の経済的利益が生じるケースも出てきています。従業員持株会と同様、勤務先の株価上昇が個人の資産を大きく押し上げる構造は共通していますが、従業員持株会は入るべき?メリット・デメリットと資産集中を防ぐ3つの出口戦略で解説した持株会とは異なる制度であり、税金の計算方法も別物です。ストックオプションでは「税制適格」か「税制非適格」かによって、課税されるタイミングと税額が大きく変わります。

税制適格ストックオプションと税制非適格ストックオプションの違いは?

税制適格ストックオプションと税制非適格ストックオプションの最大の違いは、権利行使時に課税されるかどうかです。税制適格は権利行使時が非課税、税制非適格は権利行使時に課税されます。

税制非適格ストックオプションは権利行使時と売却時の二段階で課税される

税制非適格ストックオプションは、権利行使した時点で、株式の時価と権利行使価額の差額(経済的利益)が課税対象になります。雇用契約に基づいて付与されている場合は給与所得として課税され、総合課税のため所得税・住民税をあわせた最高税率は55%(所得税45%+住民税10%)に達します(国税庁No.1543 税制非適格ストック・オプションに係る課税関係について)。その後、取得した株式を売却した際には、売却額と権利行使時の時価との差額が譲渡所得として別途課税されます。

税制適格ストックオプションは売却時まで課税が繰り延べられる

税制適格ストックオプションは、一定の要件を満たすことで権利行使時の課税が繰り延べられ、株式を売却した時点で初めて課税されます。取得価額は権利行使時の時価ではなく権利行使価額そのものとされるため、権利行使時の経済的利益と売却による値上がり益をあわせて、譲渡所得として一括で課税される仕組みです。上場株式等の譲渡所得には申告分離課税20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)が適用されます(国税庁No.1540 ストック・オプション税制の適用を受けて取得した株式を譲渡した場合)。

税制適格・税制非適格ストックオプションの課税タイミングの違いを示すフローチャート
図2:税制適格・非適格ストックオプションの課税タイミングの違い
項目税制適格税制非適格
権利行使時の課税なし(課税繰り延べ)あり(給与所得等)
売却時の課税譲渡所得(申告分離課税)譲渡所得(申告分離課税)
権利行使時の税率最高55%(所得税45%+住民税10%)
売却時の税率20.315%20.315%
年間権利行使価額の上限あり(企業区分により異なる)なし

表1:税制適格ストックオプションと税制非適格ストックオプションの比較

税制適格の要件を満たさないとどうなる?主な要件と注意点

税制適格ストックオプションとして扱われるには、租税特別措置法が定める複数の要件をすべて満たす必要があり、1つでも外れると自動的に税制非適格として扱われます。

権利行使できる期間には制限がある

税制適格の要件の一つとして、新株予約権の行使は付与決議の日後2年を経過した日から、付与決議の日後10年(一定の場合には15年)を経過する日までの間に行わなければならないと定められています(国税庁ストックオプションに対する課税(Q&A))。この期間外に権利行使すると、要件を満たさず税制非適格として扱われます。

年間の権利行使価額には上限がある(令和6年度税制改正で引き上げ)

税制適格の要件には、年間の権利行使価額の合計額に上限を設ける規定もあります。令和6年度税制改正により、この上限額はスタートアップの成長段階に応じて引き上げられ、設立後5年未満の株式会社が発行するものは年間2,400万円、設立5年以上20年未満で非上場または上場後5年未満の企業が発行するものは年間3,600万円まで拡大されました(財務省令和6年度税制改正)。上限を超えて権利行使した部分は、税制非適格として扱われます。

年間権利行使価額の上限額は発行会社の設立年数・上場区分によって区分が異なります。自身に付与されたストックオプションがどの区分に該当するかは、発行会社の担当部署または税理士に確認することをおすすめします。

保管委託要件が緩和された

従来、税制適格ストックオプションの行使により取得した株式は、証券会社等への保管委託が要件とされていました。令和6年度税制改正により、発行会社自身が株式を管理する方法も新たに認められました(財務省令和6年度税制改正)。非上場のスタートアップ企業で、証券口座の開設が難しい株主にも対応しやすくなっています。

株価が急騰した場合、税制適格と非適格で手取りはどれだけ変わる?

税制適格と税制非適格の違いは、株価が大きく上昇した局面ほど手取り額に明確な差として表れます。ここでは権利行使価額100万円分のストックオプションを、株価上昇により権利行使時の時価が1,000万円、その後の売却時の時価が1,500万円になったケースで比較します。

項目税制適格税制非適格
権利行使時の課税所得0円(課税なし)900万円(給与所得等)
権利行使時の税額(目安)0円最大約495万円(税率55%換算)
売却時の譲渡所得1,400万円(1,500万円-100万円)500万円(1,500万円-1,000万円)
売却時の税額(20.315%)約284万円約102万円
合計税額(目安)約284万円最大約597万円

表2:権利行使価額100万円→権利行使時1,000万円→売却時1,500万円のケースの税額試算

この試算は、税制非適格の権利行使時課税を給与所得の最高税率55%で計算した目安であり、実際の税率は他の所得と合算した累進課税の結果によって変わります。それでも、同じ値上がり益に対して税制適格の方が納税額を大きく抑えられる可能性があるという構造は変わりません。自身に付与されたストックオプションが税制適格の要件を満たしているかどうかは、会社側の付与時の設計に左右されるため、事前に確認しておく価値があります。

税制適格・税制非適格ストックオプションの合計税額を比較する棒グラフ
図3:同じ値上がり益における税制適格・非適格の合計税額比較(試算)

ストックオプションの税金で確定申告が必要になるのはどんなケース?

ストックオプションに関する確定申告は、権利行使や売却によって生じた所得の種類・受け取り方によって要否が変わり、給与所得者であっても申告が必要になるケースが少なくありません。

税制非適格で権利行使時に会社が源泉徴収していない場合は申告が必要

税制非適格ストックオプションの権利行使時の経済的利益について、会社側で給与として源泉徴収が行われていない場合は、権利行使をした年分の確定申告で所得税を精算する必要があります。給与所得者は年末調整で完結すると考えがちですが、ストックオプションによる経済的利益は年末調整の対象に含まれないことが多く、見落としやすい点です。

株式売却時は特定口座(源泉徴収あり)以外なら申告が必要

権利行使後に取得した株式を売却した際の譲渡益は、証券口座を「特定口座(源泉徴収あり)」に設定して株式を入庫している場合、口座内で納税が完結するため確定申告は原則不要です。一方、一般口座や特定口座(源泉徴収なし)で管理している場合は、売却益について自身で確定申告を行う必要があります。

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ストックオプションの税金対策として検討できることは?

ストックオプションの税負担そのものを直接減らす特別な制度は限られていますが、権利行使・売却のタイミングと資産全体の設計を工夫することで、手取りを最大化する余地はあります。

権利行使・売却のタイミングを分散する

一度に大量の株式を権利行使・売却すると、税制非適格の場合は給与所得が一時的に跳ね上がり、超過累進税率の影響を強く受けます。複数年・複数回に分けて権利行使・売却することで、単年の所得を平準化し、実効税率を抑えられる可能性があります。

資産規模が大きくなったら資産管理会社の活用も選択肢に

権利行使・売却によって得た資金の規模が大きくなり、その後の運用・相続まで見据えた設計が必要になる段階では、資産管理会社の活用も選択肢に入ってきます。設立の要否や節税効果の考え方は、資産管理会社とは?設立メリット・節税効果・相続対策から運用戦略まで完全ガイドで詳しく解説しています。

ストックオプションの税金に関するよくある質問

ストックオプションの税制適格・非適格は自分で選べますか?

選べません。税制適格として扱われるかどうかは、発行会社が設計する契約内容が租税特別措置法の要件を満たしているかによって決まります。付与時点で会社側から税制適格か非適格かの説明を受けているのが一般的ですが、不明な場合は発行会社の担当部署に確認することをおすすめします。

税制非適格ストックオプションの権利行使時の税金は会社が納めてくれますか?

雇用契約に基づく経済的利益は給与所得として扱われるため、会社側で源泉徴収が行われる場合があります。ただし源泉徴収の有無や方法は会社によって異なるため、源泉徴収されていない場合は自身での確定申告が必要になります。

権利行使価額の年間上限を超えて権利行使するとどうなりますか?

上限を超えた部分の権利行使は税制適格の要件を満たさなくなり、税制非適格として扱われます。年間でどこまで権利行使するかを事前に計画しておくことが重要です。

ストックオプションの権利行使前に株価が下落したら税金はどうなりますか?

権利行使価額を株価が下回っている状態では、権利を行使する経済的なメリットがないため、通常は権利行使を見送ります。権利行使をしなければ課税関係も発生しません。

まとめ

  • 税制適格ストックオプションは株式売却時まで課税が繰り延べられ、譲渡所得として20.315%課税されます。
  • 税制非適格ストックオプションは権利行使時に給与所得等、売却時に譲渡所得の二段階で課税されます。
  • 株価が大きく上昇した局面では、税制適格か非適格かで合計税額に大きな差が生じます。
  • 確定申告は、特定口座(源泉徴収あり)で完結する場合を除き、原則として必要です。
  • 令和6年度税制改正により、税制適格の年間権利行使価額の上限が引き上げられました。

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実際の投資判断や税務上の判断については、資格を有する税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。

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この記事を書いた人

2016年、証券会社にて富裕層・超富裕層向けの資産運用に従事。デリバティブを活用した投資戦略を中心に、資産規模に応じた最適な運用設計を提案。
2025年に独立後は、富裕層・超富裕層向けのプライベートオフィスを設立し、金融資産数億円〜数千億円規模の、上場企業オーナーから中小企業経営者含め幅広い顧客に対して、資産運用・財務・事業承継を一体で設計する支援を行っている。

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