持株会・自社株を売却したら税金はいくら?計算方法と、売却益を溶かさない資産管理術

従業員持株会・自社株の売却にかかる税金の計算イメージ図解

読了目安時間:約8分

従業員持株会や自社株を売却したときの税金は、売却益(譲渡所得)に対して一律20.315%(所得税15.315%・住民税5%)です。給与所得とは分離して計算されるため、税率自体は給与の高さに影響されません。ただし、証券会社の特定口座(源泉徴収あり)に移管していない場合は自分で確定申告が必要になり、取得費の計算方法を誤ると納税額が大きくずれることもあります。

この記事でわかること

  • 持株会・自社株の売却益にかかる税金は譲渡所得として20.315%です
  • 取得費は「投資等報告書」の簿価単価を使うのが原則です
  • 特定口座(源泉徴収あり)以外は自分で確定申告が必要です
  • 売却益を一度に使い切らないための資産管理の考え方がわかります
  • まとまった売却益は資産管理会社の活用も検討対象になります
中島宏明

監修者

中島宏明

投資コラムニスト、経営者のゴーストライター(書籍、オウンドメディア、メルマガ、プレスリリース、社内報、スピーチ原稿、YouTubeシナリオ、論文…)

2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。2014年に一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。マイナビニュースで、投資・資産運用や新時代の働き方をテーマに連載中。

目次

持株会・自社株を売却したときの税金の仕組みとは?

従業員持株会や自社株を売却したときの利益(譲渡益)は、給与所得や事業所得とは切り離して税額を計算する「申告分離課税」の対象です。他の所得と合算されないため、年収が高い経営層やオーナーであっても、売却益にかかる税率は一律で変わりません。

【用語解説】申告分離課税とは
給与所得・事業所得などの「総合課税」の所得と合算せず、株式等の譲渡所得だけを切り離して独立に税額計算する仕組みです。

株式等の譲渡所得にかかる税率は、上場株式・非上場株式のいずれも所得税15%・住民税5%の合計20%に、復興特別所得税として所得税額の2.1%が上乗せされ、実質税率は20.315%になります(国税庁No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税))。売却額そのものに課税されるのではなく、「売却額-取得費-譲渡費用」で計算した利益部分にのみ課税される点は誤解されやすいポイントです。

区分税率内訳
所得税15.315%基本税率15%+復興特別所得税0.315%(15%×2.1%)
住民税5%都道府県民税・市町村民税の合計
合計20.315%売却益に対する実質税率

表1:持株会・自社株の譲渡所得にかかる税率(時点:2026年7月)

配当金にも別枠で課税される

持株会に加入している間、保有株数に応じて配当金を受け取っている場合、この配当金にも税金がかかります。配当所得は原則として総合課税ですが、上場株式の配当については申告分離課税・申告不要制度も選択できます。売却益とは別枠の課税関係になるため、混同しないよう注意が必要です。

奨励金(インセンティブ)は給与所得として課税される

持株会では、拠出額に対して会社が数%の奨励金を上乗せしてくれる制度が一般的です。この奨励金は株式の値上がり益とは異なり、拠出のタイミングで給与所得として源泉徴収の対象になります。売却時の譲渡所得とは課税タイミング・区分がまったく別である点を押さえておきましょう。

持株会の税金の種類(配当課税・奨励金課税・譲渡所得課税)を整理した図解
図2:持株会に関わる3つの税金とタイミングの違い

売却時の取得費はどう計算する?

譲渡所得の計算では「売却額からいくら差し引けるか(取得費)」が納税額を大きく左右します。従業員持株会の場合、給与天引きで少しずつ買い増しているケースが大半のため、取得費の計算方法を正しく理解しておく必要があります。

原則は「投資等報告書」の簿価単価を使う

持株会からは定期的に「投資等報告書」や退会時の「退会(引出)精算書」が交付されます。ここに記載されている「簿価単価」を基に取得費を計算するのが原則です(国税庁従業員持株会を通じて取得した株式の取得費等)。複数回にわたって買い増した株式は、取得のたびに単価が異なるため、総平均法に準ずる方法で1株あたりの取得費を計算します(国税庁No.1464 譲渡した株式等の取得費)。

簿価単価が不明な場合の代替手段

簿価単価の記載がない場合は、拠出金額の総額を取得株式数で割った金額を使います。それでも取得費が計算できない古い取得分については、名義書換日の相場(当時の終値等)を根拠にする方法もあります。いずれの資料も入手できない場合、売却代金の5%を取得費とみなす概算取得費の特例を使うことも可能ですが、実際の取得費より低く見積もられ、結果的に納税額が増えるケースが多いため最終手段と考えてください。

取得費の資料は退会前に必ず確保しておく
投資等報告書や退会精算書は退会後に再発行できないケースがあります。売却・退会を検討し始めた段階で、持株会事務局にこれまでの取得履歴を照会しておくことをおすすめします。

確定申告は必要?特定口座との関係は?

確定申告が必要かどうかは、株式を証券会社の特定口座(源泉徴収あり)に移管しているかどうかで決まります。

口座区分確定申告備考
特定口座(源泉徴収あり)原則不要売却時に証券会社が税額を源泉徴収・納付済み
特定口座(源泉徴収なし)必要年間取引報告書を基に自分で申告
持株会から直接引出・証券口座未移管必要自分で譲渡所得を計算し申告

表2:口座区分ごとの確定申告の要否

持株会を退会して株式を証券会社の口座に移管していない場合、あるいは端株を持株会から直接精算した場合は、原則として自分で譲渡所得を計算し確定申告をする必要があります(国税庁従業員持株会を通じて取得した株式の取得費等)。医療費控除やふるさと納税など、他の理由で確定申告書を提出する場合は、株式譲渡益がわずかな金額であっても申告に含める必要がある点にも注意してください。

譲渡損失が出た場合の注意点

売却額が取得費を下回り譲渡損失が生じた場合、この損失を給与所得など他の所得と相殺(損益通算)することはできません。上場株式等の譲渡損失は、同一年の上場株式等の譲渡益や配当所得(申告分離課税を選択したもの)とのみ相殺可能で、相殺しきれない損失は確定申告により翌年以降3年間繰り越せます。

特定口座の有無による確定申告の要否フローチャート
図3:確定申告が必要かどうかを判断するフロー

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売却益はいくら手元に残る?実額シミュレーション

売却益に対して一律20.315%が課税されるとイメージしづらいため、具体的な金額で試算します。取得費を差し引いた譲渡益が3,000万円だった場合の手取り額は以下のとおりです。

項目金額
売却額5,000万円
取得費(簿価単価ベース)2,000万円
譲渡益(課税対象額)3,000万円
税額(20.315%)約609万円
手取り額約4,391万円

表3:譲渡益3,000万円のケースの税額シミュレーション(試算・実際の税額は取得費資料により変動します)

売却額の20%強が税金として引かれる計算ですが、裏を返せば手取りの約8割は自由に使える現金として残ります。この「まとまった現金が一時的に手元に入る」タイミングこそ、資産管理を誤ると数年で目減りしてしまう分岐点です。

売却益を浪費で溶かさないための資産管理術とは?

従業員持株会や自社株の売却益は、住宅ローンの繰上返済や高額な買い物に使い切ってしまい、数年後に「あの時のまとまったお金はどこへ行ったのか」と振り返るケースが少なくありません。売却益を長期的な資産として維持するには、受け取った直後の使い道を決める前に、一度立ち止まる仕組みを作ることが重要です。

①納税資金を先に確保する

確定申告が必要なケースでは、売却の翌年に約20.315%の納税が発生します。手取り額をすべて使ってしまうと納税資金が不足するため、売却後すぐに税額相当分を別口座に分けておくことをおすすめします。税額の詳細な計算方法は、ストックオプションの税制とあわせて整理した記事でも解説しています。

②使い道を決める前に「置き場所」を決める

売却益をどう使うか決める前に、まず「どこに置いておくか」を決めることが浪費を防ぐ第一歩です。普通預金に置いたままだと生活口座と混ざり、少しずつ取り崩されていきます。別の証券口座や信託口座に移し、生活資金と明確に分離しておくと、無自覚な支出を防げます。

③退会・売却前に出口戦略を描いておく

持株会からの退会・売却は一度きりの判断になりやすく、事前に出口戦略を描いておくかどうかで、その後の資産形成の道筋が大きく変わります。退会のタイミングや持株比率の下げ方については、出口戦略を整理した記事で詳しく解説しています。

④まとまった資産の受け皿として資産管理会社を検討する

売却益が数千万円〜億単位になる場合、個人で保有し続けるより、資産管理会社(プライベートカンパニー)を設立して資産の受け皿にする方法も選択肢に入ります。法人で運用益を管理すれば、所得の分散や将来の相続対策にもつなげやすくなります。設立のメリットや節税効果については、資産管理会社の完全ガイドで詳しく解説しています。

売却益を溶かさないための4つの資産管理ステップの図解
図4:持株会・自社株の売却益を守る4ステップ

よくある質問

Q. 持株会の売却益は確定申告しないとどうなりますか?

特定口座(源泉徴収あり)を経由していない売却益を無申告のまま放置すると、後日の税務調査で無申告加算税・延滞税が課される可能性があります。取得費の資料が乏しい場合でも、わかる範囲で試算し申告することが基本です。

Q. 奨励金にも譲渡所得と同じ税率がかかりますか?

いいえ。奨励金は拠出時点で給与所得として課税され、税率は他の給与と合算した総合課税(累進税率)になります。売却時の譲渡益(20.315%の分離課税)とは仕組みが異なります。

Q. 持株会の株式を相続や贈与で受け取った場合の取得費はどうなりますか?

相続・贈与で取得した株式は、被相続人・贈与者の取得費をそのまま引き継ぎます。取得時期や取得費が不明な場合は、当時の名義書換日の相場などで推定する方法を検討します。

まとめ

  • 持株会・自社株の売却益(譲渡所得)には一律20.315%が課税されます
  • 取得費は投資等報告書・退会精算書の簿価単価を使うのが原則です
  • 特定口座(源泉徴収あり)以外は自分で確定申告が必要です
  • 譲渡損失は給与所得と相殺できず、上場株式等の譲渡益・配当所得とのみ相殺可能です
  • 売却益は納税資金の確保と置き場所の分離から資産管理を始めるのが安全です

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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や投資助言を行うものではありません。 記事内の情報は執筆時点のものであり、最新の状況とは異なる場合があります。 実際の投資判断や税務上の判断については、資格を有する税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。

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この記事を書いた人

2016年、証券会社にて富裕層・超富裕層向けの資産運用に従事。デリバティブを活用した投資戦略を中心に、資産規模に応じた最適な運用設計を提案。
2025年に独立後は、富裕層・超富裕層向けのプライベートオフィスを設立し、金融資産数億円〜数千億円規模の、上場企業オーナーから中小企業経営者含め幅広い顧客に対して、資産運用・財務・事業承継を一体で設計する支援を行っている。

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